2016年6月15日水曜日

メイカーズインタビュー#3 吉崎航 さん 後編



■アスラテックの名物エンジニア、吉崎さんの野望

アスラテックの名物エンジニア、吉崎さんにお話を聞いてみることにした、くまきゅ開発チーム。お話を聞くほどに、吉崎さんの恐るべき野望があらわに…(冗談です

ご対面

■V-sidoが創る世界

金:話を少し戻しますと、そういう「世界を創る」という考えから、V-sidoを創られたと。

吉:そうですね。
  僕は、だから、1台のロボットを創ることには執着していなくて。
  自分が10年かけて1台のロボットを創るよりも、ロボットが世の中にあふれさせる方法がほしいと思ったんです。

金:おおぅ…(や、野望見えてきた!)

吉:となったら、ソフトウェアだと。どうすれば、人型ロボットが”社会的立場”を得られるか、そういう検討を始めたいなと思ったんです。
  そのために、自分で10年以上かけて職人的に一台のロボットを作るのも意味があるとは思うんですが…それでホントになんでもできるのかなと。
  私は工事現場で働くロボットも、ステージで踊るロボットも、家庭で働くロボットも、どれも流行ってほしいけど、まだ未熟な点があって、だから実際に社会にロボットを置いてみて、役に立つのか、私自身の眼で観てみたいと思いました。
  その流れの中で、私のソフトが助けになって出てきたら素晴らしいなと。
  頭の中のシミュレーションだけでなく、私自身が現場でやってみたい。
  意外な使いみちがあるかもしれないですよね。僕だけではできる数もたかだかしれているので、誰かとやってみたい。
  で、その土壌をつくるにはソフトだと思ったわけです。
  できるだけ汎用性が高くて、ロボットの試作に便利なソフトを作って「特殊なロボをやりたい方はぜひ声をかけて下さい」と言いたかったんです。

金:ほ~…すごい…なんだろ、理解はできるんです…が、大きすぎて…。
  とんでもないウイルス的な自己増殖機能を持ったものがでてきたというか、生産環境が出てきたな、みたいな感覚もありますね(笑)
  まあ、でも、わかり、ます(笑)
  わかってるのかな?とんでもないものが生まれる現場に立ち会ってる気が…(笑)

吉:いまは、クラタスなんかの巨大ロボットや、…車に変形するロボの製作にも参加させてもらっています。
  他にもアイドル型のロボットや人間に装着するロボット、重機を操縦するロボなどなど、まだ表に出ていない他のいろんなロボットもありますが、ソフトを中心に協力させていただきながら、普通では得られない種類の経験値をためていけると思っています。そこから、次のロボットに関することも具体的に考えられると思います。うちの会社、アスラテックは、名前が出ないこともありますが、関わっているロボットの特殊さと幅広さはなかなかのものだと思いますよ(笑)
  うち自体は駆け出しの企業ですが、ロボットを作ったり運用するのは各分野の一流の方たちです。そのかかわりの中から、これからロボットが出てくる社会を作る糸口を見つけます。

金:すごくわくわくしますね(笑)

吉:それができたらパトレイバーできるかなって。
  自分でつくるのもありですけど、そこじゃないなと思うので(真顔)

金:大丈夫ですか?こんな重要なお話を…自主プロダクトの(しかもくま…くま!)ブログに載せてしまっても?

吉:全部、いかにパトレイバーが好きかという説明だと思って下さい。
  あの作品が好きな人って、ロボット好きな人もいるとは思いますが、世界観が好きな人が多いと思うんです。
  ロボットに所属があったり、戦うだけじゃなくて、社会性を反映させているとか…。
  それって世界観だと思うんです。
  じゃあ、僕もパトレイバー好きとしては、ロボットそのものだけじゃなくて、「世界観」を実現しようみたいな。
  それだけの話です(笑)

金:あはははは(笑)
  すごいなと思う反面、とんでもない力を持った人がパトレイバーにはまったなみたいな(笑)

吉:まだまだなんですよ(真顔)

金:今井さんが、吉崎さんのことを、突き抜けているという(良い)意味で「変態だ」って仰ってたんですけども。

吉:形状変化って意味・・・じゃなさそうですね。

金:トランスフォーマー的な(笑)

■「世界観がある」ということ

金:私の仕事は、価値創出のためのデザインリサーチをしてくれ、というご依頼があるんです。
  その過程でこういった話が聞けるのって貴重ですね。

吉:僕も新規事業の話は好きですね。

金:リサーチをして、アイデアワークショップで考えて…と進めるんですが、なかなか「世界観を創る」話までもっていけないこともあります。新しいものを創る上では、すごく大事なことのように私は思っているんですけど。

吉:ああ、ちょっと偉そうに聞こえますもんね(笑)

金:いやいや、本当に大切なのかもしれないと思うんです。
  個人レベルでもいいので、どうポジティブな行動変容が起きるのかを考えないとダメかもと思うんです。

吉:そうですね、そういうことを描くお仕事ですもんね。

金:そうです。
  でも、吉崎さんの場合は変容の影響範囲というか、レベルが大きいですね。

吉:うーん、朝起きたらベッドのそばにロボットが立っていてほしいとか、そういう具体的なイメージをお伝えする方法もあると思うんですが、そういうのは実は気をつけているんです。
  それを言べきなのはメーカーさんだし、そういったその業界とか分野のプロフェッショナルの方と一緒にやっていくためにも、様々な分野にロボットが要る必然性、可能性を見つけたいというのが強いんです。
  人間がやっていることをロボットが奪えるか、みたいな(笑)
  それは冗談ですけど。ある意味挑戦ではあると思います。

金:ビジョンでもあり、野望でもありますね(笑)

吉:「奪う」って言葉は誤解を生みそうですけど。
  単に別の仕事が出てくるだけだと思いますし、メンテとか保守とか・・・。
  いくつかの社会的立場(仕事を実施するという意味での)をロボットで置き換えられるかというだけの挑戦です。
  次は是非ユーザテストで(笑)

金:あははは、是非(ひえ~野望の片棒を…!
  似たような話でも、自動改札機の話がありました。
  駅員さんの切符を切る仕事を奪うねと。
  で、結果はご存知のとおりなわけですが。
  人工知能も「仕事を奪う」という意味では同じような議論があったりするわけですけど。
  逆に言うと、「そんな奪われるような仕事をしていて良いのかな?」みたいな個人的な疑問はあります。
  切符を切って楽しい人もいるとは思いますが、やるべきところ、やらなくてもいいところはあるなと。
  向いている、得意なことやればいいじゃん、みたいな。
  切符切る人の楽しみが毎日来る人との挨拶だとしたら、そっちに寄せればいいんじゃないかと思います。

吉:逆転はあるかもしれないですね。
  券売機は必要なのか?コミュニケーション大事なら手で支払えばいいじゃないか、とか。
  食堂でも、お客様とのふれあいを大事にしたいからお代は手で頂きます、的な。
  僕はどっちでもいいと思います。
  靴の話と同じです。すごく、小さな違いだと思う。
  「券売機があるのは知っているが、でもウチのチェーン店では使わない」みたいな。

金:うーん、なるほどですね。
  それで言うと、「世界観」が実は決まっていないから、どっちでもいいみたいな議論が沸き起こるのかもしれないですね。
  場の目的、ルールとか、宣言みたいなものがあって、そこでどちらを選ぶかがあるとか。
  そういう話なのかもしれないですね。

吉:牛丼屋のコンセプトの違いとか、調べると面白いですもんね。
  来場者の種類とか、券売機を使うか使わないかとか、コンセプトで違ってたりしますもんね。
  もちろん、系列店を持っているかどうかとかでも違うんですけど、世界観、コンセプトを持っていればはっきり決まりますね。

金:なるほど。


■くまきゅの世界観

金:世界観の話がでたんですけど、くまきゅも実はそういうところから創るというのに挑戦したくて、V-Sidoまで大きな話ではないですけど、場の宣言とか、どういう世界をつくるんだというのを考えてからモノの開発に入りたいんですね。
  だから、今、こういう取り組みをしているんですけど。

吉:さらにユーザに近くて、役に立つものになっていくんですね。
  ぜひ教えて下さい。

金:ああ、まだ決まってなくて(笑)
  決まってはいないんですが、何となく、作ってみた時の反応から考えてはいます。
  「かわいい」「抱きしめたい」みたいな反応の向こう側の、ユーザ欲求に焦点を当てたいなというのはあります。
  反応は、その欲求を引き出すトリガーになったのかなと思っていて。
  「かわいい」って何だろうな、という。
  他のクリエイターさんとかに話を聴いてみると、スター・ウォーズのC3POとR2D2を例に教えてくださったんですが、それって人型で言語を扱うのが良いのか、みたいな。

吉:ああ、人型で言語を話さないほうがいいということですかね?

金:そうです。「かわいい」と感じる、はその差分への感覚に通じるところがあると思ってます。
  「かわいい」と思えたり、感情を引き出す世界観を創りたいという気持ちはあります。

吉:僕もR2D2のほうが好きですね。

金:以前、東大駒場リサーチセンターのオープンハウスで高橋智隆さんのご講演を伺う機会があったんです。
  あの方はお一人で創ることを好むようですが…全部一人で創りたい!みたいな。
  吉崎さんとはちょっとまた違う方向性だとは思うんですけども。
  でも、一人で作ることによる、経験のお話を伺うことが出来たなと思いました。
  振る舞いとか、インタフェースとか、それも含めた世界観の作り方がお上手で。
  サイスが小さい理由とかも、ロボットができることの限界を考えた上でのことなんですね。
  お話はすごく参考、というか、勉強になりました。

吉:そうですか。モーションも、振付とかも自身で作られるそうですね。私はそういう能力もないですし、考え方としても、自分で振り付けをするというより、ダンスの振付師の方なんかの意向を反映できる素地を作る方向です。
  カメラを作る人と、芸術品を描く人の違い・・というと表現が正しいかどうか不安ですが、高橋さんのすごさは、簡単に誰かが真似できるものじゃないと思うので。

金:それぞれ違う意味で突き抜けてるというのは同じだと思いますけどね(笑)
  でも、あからさまに違うというのは仰った喩えのとおりですね。

■ロボットの振る舞いに対する見出し

金:くまきゅの見出しみたいのってAIBOとか、ああいうモノへの愛着を引き出せたら面白いのかなとか、考えたりしてしまうんですが…。

吉:うーん、僕が展示会でくまきゅに触るとしたら、「かわいいから」触るとか、愛着があるから触るというのではないかもしれません。
  むしろ、「これ、作った人は面白い人だ!コミュニケーションとりたい!」っていうので触ると思います。

金:ああ、なるほど。

吉:相手に一方的な人格だけあっても、簡単には愛着わかないかもしれません。すごした時間とか、条件をそろえたいというか。。。これは、ひねくれてるだけですね。一方で、ただの工具でも、条件が整って気に入れば1日1回あたまなでたくなるかと(笑)
  このくまとコミュニケーションとりたい!っていう願望は、もっと外堀から条件を整えないといけないかもしれない。

金:ああ、何かの拍子に「コミュニケーションロボット」って言われた時に「まだコミュニケーションロボット…ではないかも…」と思ったんですよね。

吉:ぬいぐるみって、自分の投影だと思っているんです。だから本物の人格があるとむしろ邪魔で、ユーザの予想を裏切ってはいけない
  相手が本当の他者ではないほうが、投影しやすくて、求める姿のように思います。ぬいぐるみなら。

金:近い話はありました。
  これまでのインタビューでも、「半完成」でいいのでは、という話が出たんです。
  不完全な形にすることで、ユーザーが好きに「投影」「創る」方になっていくと。
  ユーザーが作り上げられる余白みたいなものがあったほうが良いんだろうと。

吉:同人誌でよくある話ですね。

金:えっ同人誌ですか?

吉:「原作絵が下手な方が二次創作が捗る」

金:えええー(笑)

吉:いや、割とまじめに言っています(真顔)
  それとも、芸術品で、ミロのビーナスとか、サモトラケのニケのほうが綺麗なたとえですかね(笑)

金:ああ、想像を掻き立てられる何か、的な。

吉:そうですそうです。

金:ああ、そういう「欠け」に自分の何かを反映させてるわけですもんね。
  そういう振る舞い、世界を創れたら面白いなと思ってますね。

吉:コミュニケーションロボットって、依り代という役割があると思います。
  依り代とするのであれば、2通りあると思います。
  1つは、遠くの人を乗り移らせて、他者の依り代になる時。テレプレゼンスみたいな。
  もう1つは、自分との対話で、自分の依り代にする時。この場合、いかにユーザの妄想を邪魔しないかも重要かもしれないですね。

金:うーん、電話の話が出ると、KDDIと、docomoのくまのぬいぐるみを思い出しますね。
  私達のチームもくまで作ってみていたので、ライバル現る!みたいにお知らせ下さる方もいらっしゃったんです。
  でも、私個人は「お、くま(の形をしている製品)だなあ」としか思わなくて。私自身、くまが創りたいわけでもないですし。
  そして、電話…ちがうなあと。

吉:他にもくまのインタフェースって結構ありますよね。

金:はい。東工大の長谷川先生とか、VR研究でも見たことがあります。

吉:ぬいぐるみというと、テディベアのイメージありますしね。

金:じゃあ、くまじゃないのなら何なんだ、って話なんですけども、ちょっと変な意味じゃない性欲みたいな、ふれあい欲みたいなものかなと思ったこともあります。
  観て下さる皆様を観てると、お子さんとか、成人男性も反応高いんです。
  で、「ぎゅ(ハグしてくれる)」というのがいいと。
  色んな見方をしてみているんですけど。

吉:うーん、その見方も面白いですね。

金:子供とか、男性でも素直な方が反応したのかな、と思ったところはありました。

吉:子供も来ますか?

金:来ましたね。きゃーって言って(笑)

吉:ああー、どういう場で見せたんですかね?

金:ああ、ハッカソンと展示会ですね(笑)
  一般的なサンプルと言えるか…(笑)

吉:そうかもしれないですね(笑)
  体験しないと損!って考え方かも(笑)
  あるいは、くまきゅを作った人と話したい!みたいな邪念かも。私みたいに(笑)

金:そうですねえ~。
  まあ、でも色んな見方をしているうちにポジションを模索できるかなと思ってはいます。

■くまは何に化けるのか

吉:で、くまがつくりたいわけではないとすると、何になるんでしょうね。
  単にハプティック研究がスタートだとすると、意外にも2号機以降はペン型とかになってたりするんですかね(笑)

金:お、それは…目をそらしてみます(笑)

吉:まずはクマがやりやすいだけだったりとか(笑)

金:うぐ(笑)

吉:たしか、CGの入力インタフェースでくまのぬいぐるみを用いたものがありましたが、製品化に際しては、人型になってました。
  関節可動域の問題もありますから、当然と言えば当然ですが。
  例えば抱きしめるとかという要素を抜き出して意味を与えると、くまのぬいぐるみじゃなくなることはあるかもしれないですね。

金:そう思います。

吉:そうなった時に、何の欲求を体現させたいかで方向性が違ってくると思いますが…。
  違う製品との連携は今のところないんですよね?

金:現時点では考えていないですね…。

吉:道具とかじゃないですし…人間の欲求ってことですよね。
  ぬいぐるみが満たしているとすると、もしかしたらドールとかに近いのかもしれないですね。40cm-60cmの人形。
  ただもし、ドールをロボット化するなら、モータ入れてガシガシ歩くとか、お仕事するのはやめたほうが良いかもしれません。

金:ああ、それは何となくそう思います。

吉:お好きな方に話を聞くと、動いてほしいわけでも、仕事してほしいわけでもないんですよね。
  自分の妄想の範囲を超えてほしくない
  動いてほしくないなら、ロボット化は必要ないかもと思ってしまうんですけど、そうでもない。
  着替えさせるときに、手をかけるとバンザイしてくれるとか、足の10個以上ある関節を1個1個動かすんじゃなくて、腰だけ手を添えると、綺麗に立ち上がってくれるとか、そういうのでも良いのかもしれないです。
  手を引くと、歩いてくれるとか。無理して「勝手に動く」「AIでコミュニケーションする」とかしなくても、ユーザの思う動きを補助するだけでいい。それが、ぬいぐるみならどういう感じになりますかね。

金:インタフェースのインタラクション実験で、オウム返し実験があったんです。
  「自分を投影する」って色んな捉え方できるんですけど、内省を促す場合には、その程度の反応でも良いのかもしれません。
  ドール…は私個人はやや馴染みがないので、人間の形をとるのかはちょっとわかりませんが。
  でも、興味深い世界だとは思いますね。
  私自身は、人形とか、ぬいぐるみとかよりは、本物の人や動物のほうがかわいらしいと思うのも影響しているかもしれないです。

吉:それは、たしかにそうですね。

金:ああ、人によるとは思いますが(笑)

吉:人、動物でも見本に似せようとしている限りは越えづらいんじゃないかなと思います。
  でも、それにしか出来ない何かが、すぐに出てくると思いますが。
  本物のほうが良いって、極めて正常ですよね。
  僕は割と人型が好きですけど(笑)
  あと私、くまは本物じゃないほうが良いな(笑)

金:たしかにそうですね!(笑)

■動物のくまとぬいぐるみのくま

吉:本物のくまを模倣すると、どちらかというと木彫の方になりますよね(笑)
  ぬいぐるみはもっと、イチゴに対するイチゴ味というか、記号化されている気がします。

金:そうですね。
  ぬいぐるみはかわいさ重視なのかな、関節とかも人に近くて、頭だけ記号化したくまですね。

吉:そうですね。案外、頭をねこにしても機能は変わらないかも(笑)

金:ああ、ねこきゅでもいいんですけどね(笑)

吉:にくきゅ!みたいな(笑)

金:ああ、吉崎さんからまさかのねこジョークが(笑)
  でも、くまはいいとしても、人形に馴染みがないのって、人の形をしているのに人でないところに逆に怖さを覚えるのかもしれないです。
  ピエロとか、表情がわからない人形は更に怖い気がしてしまう時がありますね。

吉:能面とか、ああいうのもダメですか?

金:あー、それはまたちょっと違う気がしますね。
  能面の感情の反映させ方ってもう少しストレートな気がしてます。
  感情の反映を邪魔しないように限りなくそぎ落としている感はあるんですけど、ギリギリ怖くないですね。
  意図がわかりやすいのかもしれない。

吉:もしかしたら、コンセプトは石黒先生のテレノイドに近いですかね。
  石黒先生のテレノイドはどう思われましたか?

金:うーん、まだ経験していないので、何とも…。

吉:たしか、人間ぽいけど、ギリギリまで個性をそぎ落としてこの形状になったとうかがったような。

金:映像でしか見ていないですが、パット見怖いなと思いましたね。
  体験はしていないので、何とも。

吉:ちょっと怖いと…(にやにや

金:いやいや何でなんですか(笑)
  能面もパット見は怖くなってますよ?
  ピエロとか、何かを隠している感じがあるとだめなのかな?
  うーん、なかなか難しいですね。自分の感情分析は。

■くまきゅの向かう先

良い顔!くまきゅも喜んでいる!
吉:ちょっとまだ本筋から外れてしまってますか?

金:いやいや全然。吉崎さんの現在に至った経緯とか、野望の話だけでも面白いです。
  お考えになられたことをエピソードを伴ってお伺いできるのも興味深いですし。

吉:くまきゅに直接的ではなくて申し訳ないですが(笑)

金:答えを教えていただきたいわけではないので(笑)
  くまきゅの話で言うと、スペキュラティブデザインでも良いかなとは思います。
  問題提起型デザイン、ということなんですけど。
  生活の中にくまきゅが存在するという姿を見せた時に、人の反応を引き出すというか。

吉:ふむふむ…ちなみに、アートとは違います?

金:バイオアートみたいなのにも近いかもしれないです。
  先日、バイオアートの講演を聞いたんです。
  既存の考え方に対する疑問符を投げかけることになるので、ちょっと倫理とかそういうものに触れるような側面もあるように思いました。
  そこまでは行かないかもしれないですけど、従来の在り方をちょっと見直すという感じですかね。
  チームではそういう議論もしています。

吉:むーん。

金:例えば、かわいいの掘り下げもあると思います。
  コレを採用するかは別ですが、立場の優劣によるかわいさ、みたいのもあるなと思っています。
  自分の言うことを聞く、自分の思い通りになる、だからかわいい、みたいな。
  で、ちょっとだけ行き過ぎている感じにしたいっていうんですかね(笑)

吉:ああ、なるほど。
  そこにちょっと驚きがあると益々いいんでしょうね。
  聞き手がほしいといっても、飽きてしまうので、時々おっと思わせる切り返しをする。
  コミュニケーションロボットの難しい点ですね。

金:なるほど。

吉:想像の範囲ちょっと越える、っていうのが良いのかもしれない。
  難しいですけど。
  R2D2は実際の人間が中で振舞っているので、頭いいんです。
  しゃべれないから頭が悪いとかじゃなく、ちゃんと考えてますからね。

金:なるほどですね。
  くまきゅは、子供の寂しい気持ちを受け止めるとしたら、その頻度を何らかの形で「こうですよ」と返したらどうなのかなと思ってはいるんですけど。受け止めるだけじゃなくて、返してくる。

吉:数字ですか?

金:数字でなくてもいいんですけど。
  表情とかでも良いです。
  それを問題提起型と言ってもいいかもです。

吉:どうも、研究用の実験っぽさが出てきますねぇ。

金:あはは研究ですね(笑)

吉:なんだかなー、みたいな(笑)
  研究者でなく、参加者が気づく形がいいかもしれないですね。
  技術的な実現性はおいておいて、振る舞いに応じて形状変化とか起こると面白いですね。
  「ああ、自分はこういうふうになってほしいと思ってしまっていたんだ」みたいな。
  ある意味衝撃かも(笑)

金:ああ、それは面白い。
  吉崎さん的ですね。その考え方は。

吉:考えさせられる気がします。
  自分はこういうふうにしか見ていなかったのか、とか。
  実はこういう欲求を持ってたんだな、という。
  友達っていうかたちだったり、猫ってかたちだったり。

金:それはすごく興味深いですね。
  振る舞いを本人に返す、というのは考えていきたいですね。
  加速度を入れて、持ち上げられ頻度を測ると。
  で、「そろそろだな」と思うと、逆に抱きしめに来てくれる、みたいな。

吉:適切なタイミングで抱きしめてくれとせがんでも良いかもしれないですね。

金:ペットとか、そうですもんね。

吉:鬱陶しいこともあるので、そのバランスの最適化はどうするのか、とかはありますが。

金:人工知能とかも考えてしまいますけど。

吉:あと、どういう状態にあるのかを測るとどういうことをされているのかわかりますね。
  人によって違いあると思うので。
  投げつけてることとか、子供だと振り回したりすることもあるかも。
  「何するんですか」とか言い出したりすると面白いかも(笑)

■インタビューを終えて

吉崎さんの野望を聞くと、驚くんですけど、未来を感じて元気をもらえます。
ビジョンが大きく、世界観への強い思いが印象的でした。
そして、幅広くロボットにかかわられているだけあって、お話も幅が広くて楽しい時間を過ごせました。
書き起こしが面白くて、手が止まる止まる(笑)
そして、パトレイバーを見返したくなる(笑)
さて、書店に行こうかな…。あれ、これってパトレイバーファンの対談だっけ…?




メイカーズインタビュー#3 吉崎航 さん 前編



■受付にて

金子(以下金):こんにちは~お約束を頂いております金子と申しますー。
ご対応いただいた方:どうぞ、こちらですー。


吉崎(以下吉):こんにちは。今日はよろしくお願いします。
金:こちらこそ、お忙しい中すいません。よろしくお願いします。
  (いつも通り、仏のようなほほ笑み…)
吉:今日は質問とかは特にないというお話だったんですけど、くまきゅについて話せるということで楽しみにしてきました。
金:えっ、でもゆるいんで、何ともいえないんですけど…(笑)
  私は吉崎さんにお話をお伺いできるということで楽しみにしてきました。



あの吉崎さんを半目で写真撮る不届き者は私です。

■ロボット好きは「ロボットユーザーになりたいからロボットを作っている」


金:インタビューをお願いした理由としては、くまきゅに見るHMIを検討したいと思っているからなんですけど…。
  これをロボットと呼んでいいのかわからないんですが、人と機械の関係性を考えてみて、再制作に進みたいと思ってはいるんです。
  一般の生活者にお伺いするのはまだ早いと思っていて、「創る側」「新しい領域に理解がありそうなクリエイター」にお話を伺っています。

吉:そうですね。ヘタすると、新しい物って「欲しいですか?」と聴いてしまうと、8割「ああ、はい」みたいな回答になってしまいますもんね。

金:そうなんです!そうなんですよ~!

吉:まだ普及していないものに関しては、聞き方難しいですよね。利点についても欠点についても想像力が働きにくい。

金:新しい領域とか、名前がまだないものについては、有識者とかに聞くのがいいかなと。

吉:そうですね。有識者と呼ばれる人たちにも想定の難しい場合はありますが…

金:それはあるんですが、そこは雑談的に考えながらお話していくのでもいいかなと。
  今回の取り組みでは、割と面白いお話が出てます。

吉:ロボット好きには、つまるところ「自分がユーザになりたいから」という理由で作り始めている人も多いですから、いろいろ本人の中でイメージできてるんですかね(笑)

金:おおー、創ると同時にユーザーでもあるんですね。イマドキのMakerっぽいですが…

吉:自身が作ってるものが、社会で使われている様を想像しながら作られている方も多いかなって。だって、ほしいじゃないですか。SFみたいなロボット。作ると同時に潜在ユーザーでもあるという。

金:今まで聞いた方からは自身もユーザーであるという言葉で表現されたことはないですね…。

吉:買いたいけどないから作ってる人が多い分野だと思ってます。

金:なるほど。じゃあ吉崎さんのほしいものってなんだろう?と聞きたくなってしまいますね。

■ロボットそのものじゃない、「ロボが当たり前の未来」が欲しい

吉:私の場合…相当幅広くなっちゃうと思うんですよね。ほしい”ロボット”
  たぶん、ひと昔前のマイコンがそうだったみたいに・・・いろんな製品にあたりまえのように組み込まれた結果、存在がわすれられるのが理想ですかね。
  たとえば、ロボット掃除機が現行の掃除機を絶滅させられるほど利便性の高いものになれば、そのうちこれこそが「掃除機」と呼ばれるかもしれない。
  一方で、ヒューマノイドというか、人にある程度近い形状で作業をする汎用機械だけは、簡単には分類しづらいので、将来はこれのみをロボットと呼ぶようになるかもしれないですね。
  他のロボット掃除機とかは、ロボティクスで強化された何か・・という未来。

金:前は「ロボット」というと、見た目が二足歩行とかのものを想像することが多かったように思います。
  今では、四足歩行とか、擬人化した何か機械みたいなものもあると思うんですけど。
  広義でいうと、ロボティクスみたいな言葉になるんですかね?
  足腰の機能を助けてくれたり、起き上がりを支援するようなベッドも含まれるんでしょうか。
  最初、割とナンセンスな質問になってしまってましたが、そういうことですよね?

吉:そうですね。僕は、ベッド型のロボット好きです(笑)
  ずいぶん昔のアニメで、老人Zっていうのがあったんですけど。
  すこしだけあらすじをお話すると、高齢の方が高機能な最新ベッドを操って活躍(?)するっていう、そういう映画なんですよ。

金:おお!それは!未来っぽい話ですね(笑)

吉:何にでもロボット技術が適用できるようになると、それはベット機能を持ったロボットじゃなくて、単なる高機能ベッドなのかもしれないですよね。
  なんにでも「ロボ」ってつける意味あるのか、みたいな議論。
  炊飯器もかつては「マイコン式」とか言ってましたけど、今はだれも言わない。

金:なるほど。
  ロボが入っていることが当たり前の未来では、「高機能●●」であって、ロボと称するまでもないと。


■くまきゅってロボット?

吉:そこで思うのは、”くまきゅっ”て、”ロボティクスで強化されたぬいぐるみ”を目指すのか、”コミュニケーションロボット”がぬいぐるみのキャラクタを借りているだけなのかが気になります。
  それって意味がだいぶ違ってくると思うので、気になります。

金:うーん、そうですね。
  今、私はあまり…ロボットのことをよく知らない…というか。
  アスラテックの皆さんの前では知っているなどと言えないわけですけども(笑)
  「ロボティクス」という名前がついているものって、産業目的が多いように思うんです。
  何かしら、「助ける」「便利」みたいなものが多いように思える。
  で、「ロボット」っていうと、AIBOとか、愛玩目的のものもあるように思います。
  便利とか助けるってこととはちょっと違う目的のものも多いように思うんですが…。
  言葉の定義自体が難しいようにも思うんですけど。

吉:この辺のイメージは、世代とかでも変わりそうですね。

金:最近になって、ロボットやロボティクスという言葉を知った者としては、ロボットとロボティクスの違いをそういう風にとらえしまっていましたが…。
  歴史とか時代とかそういうところから学び直すとまた考え方が変わるのかもしれないですね。
  先々、ロボットとしてくまきゅを考えるのかとか、ロボティクスの入ったぬいぐるみとしてくまきゅを考えるのか。

■吉崎さんのロボット観を聞いてみたらすごい回答が…

金:で、話はややそれるんですけど、吉崎さんの思うロボットってなんなんだろう?というのが気になります。
  そもそもロボットいつから好きだったの?とか、現在はロボットに関わるお仕事をされてますが、どうしてそこに至ったのか?とか。
  そういう質問をしてみたくなりました。

吉:なるほど。
  ルーツはフィクションです。はっきり言えばアニメやおもちゃですね。
  一番最初は3~4歳の時で、ものごころついたときから好きだったみたいです。
  最初にプラモデル作り始めたのも幼稚園ぐらいでした。

金:えっ…早いですね。

吉:そうなんですかね?そのころ好きだったアニメの一つが、パトレイバーです。

金:お、パトレイバーは知ってます!かつ、好きです!
  想像世界じゃない、現実世界の中にロボットがあるって感じが新鮮で。
  3~4歳ですか?

吉:そうですね。確か90年くらい?ですもんね。OVAがあったころがリアルタイムかな?
  もちろん、ガンダムもトランスフォーマーも好きです。

金:ちなみにパトレイバーはどのロボットが好きなんですか?

吉:ど、どれ、ですか?ロボットの名前でいうと、ヘルダイバーが好きですね。

金:私はグリフォンを見たときにかっこいい!となりました。

吉:Type-J9ですね。(メガネが光る)

金:あ、J9ていうんですね。(わかってない)

吉:ヘルダイバーはこれですね(画像を見せていただく)

金:おおー、渋い!軍用っぽい…。

吉:自衛隊なんで、軍ではないですね(キッパリ)

金:あ、そうですね、それは言ってはいけないですね(笑)
  バイクとかトラックとか自衛隊仕様のものにイメージが近いですね。

吉:オリーブドラフとか、カーキとか、そういう色ですかね。

金:ええー、渋いですね(3,4歳でかあ…)
  男の子の小さい頃って赤とか白とかはっきりした色が好きなのかと思ってました。

吉:主人公カラーですね。それも大好きですよ。
  派手な色という意味では、戦隊モノも好きだったんですけど、
  おもちゃの武器とか人形は一切もってなくて。合体ロボットだけで買ってもらってましたね(笑)

金:ああ、なるほど(笑)

吉:武器とか持ってない理由もはっきりして。
  自分が何かになりたいわけじゃなくて、何かを動かしたかったんですね。

金:それは、すごく興味深い回答ですね…。

吉:その頃から、ロボットを紙とかで創っていたみたいです。
  当時の写真見るとそういうのばっかりですね。
  後、折り紙とか、創作折り紙も好きだったみたいです。
  作ることが好きだったみたいで。

金:創作折り紙って、折り方から考えるやつですか?

吉:そうですね。
  その辺の空間認識とかの考え方、ロボットを作る上でも便利です。
  頭の体操的にも効きそうな感じですね。

金:ああ、本当に元々って感じなんですね。
  筋金入りっていう言葉がぴったりな…。
  で、そういう幼少期を過ごされて、中学、高校とか、高度なことができるお年ごろには何をされていたんでしょう?

吉:小学校にはパソコンですね。
  で、中学の自由研究で「巨大ロボットは何メートルまで実現可能なのか」を計算して・・・

金:ほう!何メートルまでいけるんですか?

吉:8mですかねー。もろにパトレイバーの身長です。
  そこまでは行けるだろうと。動かすのは油圧とかでなんとか行けるだろうと。
  で、課題はソフトだと中学生ながらに考えたわけですね。もちろんかなり雑な計算なんですが。
  当時、ASIMOが歩き始めたころかな?
  そこから、高専ではソフトをやろうと。

金:中学でもう研究ですか…

吉:ただの自由研究ですよ(笑)

金:ご謙遜ですね…。
  で、高専ではソフトを学ぼうとされたわけですね。

吉:ええ。でも、一人でロボット作れるとはおもってなくて。
  そのころ、ロボコンが最も強い高専に入ったんです。
  情報系に進んだんですけど、部活というか、ロボコン部でハードの作り方も学んで、っていう感じで。
  設計も全部やりたい!できるかも!とそのころは思ってました(笑)

金:うーん、でも、当初の目標であったソフトの勉強を軸足にされたわけですね。
  あ、で、設計も「できると思っていた」と。

吉:今となっては、プロの仕事の現場を目の前にすると、なかなか「できる」とか言えないですね。
  やっぱり難しいなと。すごいノウハウ要りますよね。
  で、次は画像処理をもう少しやりたいと思って大学に進みました。

金:不勉強で申し訳ないんですが…画像処理とロボットは何がつながるんですか?

吉:目です。

金:おお、なるほど。

吉:その後、大学院大学に進学して、さらに個人制作みたいなことも始めました。きっかけは、IPAの未踏に採択されたことですね。
  ここでV-Sidoを作り始めました。

金:ああー、人に歴史ありというか…濃い!濃いですね(笑)
  で、その後、クラタスとかも手がけられて…あれは8mを超えているんですか?

吉:歩けるロボットで8mを超えているものはまだないと思います。
  そういう意味では、まだまだ道半ばですね。

■V-sidoに隠された野望

金:ちょうどお話が出たんですが、どうしてV-sidoだったのか、今日は聞いてみたいことの一つに入っていました。

吉:昔からロボットを作りたいという欲求だけからきていて、操縦士になりたいわけではないというのは一貫してました。
  どうやったら、自分のあこがれるロボットが実現するのかと考えたんです。
  たとえば、大金と人材を使って、1台だけ完成された完璧なロボットがつくれればいいのか?・・・たぶん違うんですよね。
  たとえば…変な話ですけど、100年前にスマホ持ってくとしますよね。
  そうすると全然使えないわけです。充電、電波、GPS、すべての条件がそろっていない。
  それと同じことが、ロボットにも言えるのかなと。
  完璧なロボットがあったと仮定して、1台だけあっても全然本質的じゃない。
  だって、自分が見ていたロボットの世界、SFの世界では人が、文化が、社会的背景が、ロボットを受け入れていたじゃないか、と。
  だったら、ロボット作るよりも先に、世界観を構築するのが良いよね。って思っちゃったんですよ(笑)
  パトレイバーも、世界の説明から入るじゃないですか。

金:最初、確かレイバーというものを説明するシーンがありましたね。

吉:そうそう、レイバーが投入される理由を説明しているんですよ。
  バビロンプロジェクトという計画を達成するために公共事業が大量に発生していて、それを効率的にこなすためにレイバーが開発・生産されているという社会背景。
  レイバーが土木作業用に大量に作られるんですけど、悪用した犯罪も出てきて。
  それで警察は、対ロボット用の戦闘ができて犯罪者への心理的な作用も考えられた、かっこいいロボを作った・・・という感じだった気がします。長いですね(笑)。
  そこまで考えないと、カッコいいロボットは出てこない。

金:あっはっはっは(笑)
  いい分析ですね(笑)

吉:他の物語にしても、理由は不明かもしれないですが、やっぱり受け容れられちゃってるんですよね。
  なんかわからないけど、もういる、みたいな。
  ただそうすると、戦車でもいいんじゃないか、とか言われる。いいんじゃないですかね。戦車でも同じ物語はできるかもしれない。
  ただ、何らかの理由で、戦車がロボットに置き換わっただけです。偶然かもしれないし、だれかが仕組んだかもしれない。
  ぬいぐるみも、家のお手伝いさんも、技術が進んだ先にふと、ロボットに置き換わるかもしれない。
  それはどんな理由なのか、公共事業なのか、だれかがロボを無償で配ったのか、人間のお手伝いさんを禁止する法律ができたのか・・・
  だれかが作ったそういうきっかけが、SFを実現するかもしれない。

金:いい妄想力ですね(笑)

吉:私は今、ロボット関連の政府の委員やら参与として、いくらか議論に参加させてもらっていますが、そういうまじめな取り組みにおいても、社会にどういうきっかけを与えればロボティクスが広まるのか、というのはもちろん重要視されてます。実際に頭を悩ませているのは私よりずっとえらい人たちですが(笑)
  技術だけでなく、社会変革にも目を向けないと、パトレイバーは登場しないはずです。ロボットの必然性は、既にある需要やその解決法がどう変化するのかと関係がもちろんあるわけですが、それは外的要因で変えられる

金:なるほど。

吉:というか、そういうのって比較的小さなきっかけで変わったりする気もするんです。

金:小さなきっかけ…。

吉:そうです。
  例えば、歩行ロボットとタイヤロボットの優位性についてどう思います?
  もし明日、誰かが人型でパーフェクトなお手伝いロボットを安価に市場へばらまいたとしますよね。
  人を雇うのと同じノリで、それより安く雇えるなら、すぐに流行るでしょう。家庭内のお手伝いなら、階段も登れる脚のほうが、タイヤより便利そうです。
  ただ、そんなパーフェクトなロボットは、さすがに明日には発売できません。技術の問題もコストの問題もあります。ならいつ登場するのか?
もし、このロボットが市場にばらまかれるより前に、皆さんの家から段差がなくなり、完全バリアフリー化されたならば、それでも家庭用ロボットに脚は必要でしょうか?
  先に家から段差がなくなってしまったら、もうタイヤでいいんじゃないでしょうか?
  
金:おおぅ…。

吉:違う言い方をしてみます。靴を履くのも、清潔な道路を保つのも大差はないとか、そういうことです。
  たとえばアメリカの家では靴を履いたままだけど、日本の家では靴を脱ぐ。
  その割合は、単に流行った時期の技術水準や社会背景に依存しちゃいます。
  世の中のことは大抵、その時々の最適解になってると見せかけて、案外歴史とかの非効率な理由で決まってるように思います。
  だから、誰かが自宅のあらゆる機器に脚を付けて便利さを証明すれば、とても面白いことが、起こるのかもしれません。
  こういうことを言うと、コストを指摘してくださる方がいらっしゃったりするんですが、一度起こってしまえば案外便利、というのはあると思います。

金:うーん、本質からそれてしまうかもしれないですけど。
  アトムの創世記の漫画を読んでいるんです。
  それを読むと、機械に足があるかないかはやっぱり「違う」ように感じますね。

吉:どう違うんですかね?

金:段差の越え方が変化しますね。
  そうすると、行けるところの幅が違う。
  山林、砂漠、車輪などでは行けない世界へのアプローチが出来ますね。
  そうすると、使える幅が代わって、必然性が変わるなと。
  やっぱり脚があるとないとは違う世界と感じてしまうんですが…。

吉:なるほど。誤解させてしまったのであれば申し訳ないんですが…。
  やはり靴の話で例えると、全ての道を清潔で平らにしても、「靴があったほうがいい」派は存在するわけです。
  山に行くには靴が必要だろう、全ての道が舗装されるわけじゃないだろうと。
  その通りですね。でも、メジャーかマイナーかというのは、小さなきっかけで、やはり変わるように思います。

金:ああ、メジャーとマイナーの割合の話ですね。

吉:足とタイヤ、全く違うのはその通りですが、メジャーとマイナーは小さなきっかけで変化するということですね。
  すべての道が舗装されて屋根があれば、山に行くのって年に何回なんだと(笑)靴なんて年に一回くらいしか使わないよ・・・という未来も、条件を整えればあるのかもしれない。たとえば未来の火星コロニーとかは、そうかもしれない。基本の生活空間はすべて清潔な道になってるかもしれない。
  だから、人型ロボットが無駄だとか、技術的困難だとか高価だとか、そういう理屈もあるけど、それを超えた観点で流行る要因はあるはず。個人的にも歩くロボットが好きなので流行ってほしい。

金:確かに歩く、というのは楽しいですね。

吉:あったほうがいいと思いますよ(笑)


吉崎さんの今までを振り返り、V-sidoに隠された野望を知ったところで、後編に続く…!

メイカーズインタビュー#2 谷口直嗣 さん 後編


■5周回って3周目あたりを狙ってくる谷口さんのインタビュー後編


ブラジル料理屋で話を聴き始めたん担当者…。
谷口さんの視点は先を行っていて驚くっていうか、ブラジル料理おいしいなあ。

■Pepperに見る"ロボット"


谷口さんのいい笑顔
谷:Pepperの話に戻りますが、webのデザインの方は新しい物もお好きですし、Pepperのアプリを手がけているのもよく見かけます。
  CGやゲームをやっている側から観ると、Pepperに身体があること、腕や手が付いていることを前提にしない演出かなと思うこともあります。
  そういったことに関しては、ゲームとかCGの経験者のほうが経験として持っている場合もあるなとありますね。
  もう少し言うと、舞台演出とかやっている人が向いていると思うこともあります。

金:え、ロボットに舞台演出ですか?

谷:演劇とかですね。インタラクションの側面でそう思います。

金:なるほど…。知らないからこそ原始的な質問をしますが、スマホやタブレットと決定的に違うのは、物理性かなとも感じます。
  人間の生活に対してフィジカルなアプローチがないなと思っていて、その部分を担うのはロボットかなと思うんです。
  でも、フィジカルなサポート、というと、従来の産業ロボットとの差がないというのも正直な感想です。

谷:ソフトバンクのプロジェクトは、長い目で見た"実験"だと思っています。
  Pepperって役に立たないじゃないですか。でも、使わせたり、売るという実績は持っている。
  でも、実績や経験値って大切なので、そうやってロボットビジネスは具体的になったり、育っていくんじゃないかと思ってます。

金:ふむ…なるほど。
  で、くまきゅのテーマは現在HMI、人と機械の関係性について模索することなんですが、先ほどの産業ロボットを例に考えてみたいと思います。
  フィジカルなアプローチに対するフィジカルな部分の大きい印象の結びつきは、"既存"の領域であると思ってます。
  産業ロボットの「動作」に対して「作業完了」とかですね。
  突き詰めていけば更に面白くなるとも思っていますが、違うことを考えてみてもいいなと。
  例えば、フィジカルなアプローチによってメンタルに訴えかけるというのも面白いのかなと。
  くまきゅは「振る舞い」によって「メンタル」に影響がある(ポジティブな方向に)領域を意識しています。
  「見出し」みたいな側面も大きいんですけど。

谷:それはね、あると思います。

■インタラクションって何だ

ポムポムプリン(サンリオ)や!
谷:この間、僕は渋谷でやっていた「ポムポムプリン(サンリオのキャラクター)」を見に行ったんですよ。
  ※渋谷駅で半立体のほぼ成人等身大のポムポムプリンが展示されていた。
  これ、これです(撮影画像をお見せ頂く)
  結構等身大ででかいんですよ。
  これで、みんな触ったり抱きついたりするんです。
  これは見た目の通り、触感があって(ふわふわの布が貼ってあり、綿を入れてふわっとさせていた)、ふわっとしているんです。
  電気とか使っていなんだけど、僕はこれは「インタラクションの発生するサイネージである」と思ったんです。
  インタラクティブだなと感じたんですね。

金:!

谷:従来のサイネージみたいに画面があって、グラフィックが入ってというよりもインタラクティブと思った。
  少し乱暴な言い方かもしれませんが、インタラクティブってコンピュータがあることが前提ではないなと思いました。

金:キャラクタの話が出たのでもう一つお伺いしてみたいのですが、くまきゅの持っているテーマの一つに「かわいい」というのがあります。
  これは関係性構築の目標値みたいな扱いをしていて、目指すべき「かわいい」をどう扱おうか迷っているところです。
  「かわいい」って何だろう、みたいな。
  谷口さんが飲み会で「C3POとR2D2だったらR2D2のほうがみんな可愛いと思うよね」と仰っていたのが印象に残っています。
  この話題では、人間との関係性における優劣とか、コミュニケーションにおける非言語性とか、いろんな要因が絡んでいるように思えます。
  大変参考になりそうなので、もう少し掘り下げたいと思います。
  人間側の思い込みというか、「見出し」みたいな思考のくせみたいなものも、インタラクティブということに繋がりそうに思うのですが。

谷:そうですね、そのへん(インタラクション)は僕もやっていきたいなと思ってるんです。
  僕、電子工作とかやらないんですよ。

金:え!そうなんですか!?

谷:めんどくさいじゃないですか(笑)

金:ええっ(笑)

谷:めんどくさいし、わかんないし、儲からないし(笑)

金:あははは(笑)メイカー界隈では珍しいタイプに思えますね。

谷:TMCNでは、みんな割と好きですが、みんなやらなくてもいいかなって(笑)
  興味なくはないですけど。
  電子工作っていろんなノウハウがあると思うんですけど、誰でもできちゃうって側面がありそうに思います。
  組み合わせてやれば、動いたり、LEDが光ったり。
  僕は今は、誰でもできそうなことよりは自分の得意分野を軸足にして、「誰でもはできない」ところをやりたいと。
  ロボットとか、子供の教育っていうのはレッドオーシャンに僕にとっては見えるわけです。
  で、僕はPepperとロボットアームの組合せをやったわけですけど、あれって誰でもできるわけではないと思うんですね。

金:確かに誰でもできるわけではないと思います。

谷:ソフトバンクの携帯ショップでも裏に一杯人間がいて、制御したりメンテしたりしなきゃならんわけですが、段々自動化されていくと思いますし。

金:うーん、こうやって聞いていくと、冒頭にお話に出たとおり、谷口さんにとってはロボットは「使う」対象なわけですね。
  ツールというか。

谷:まあ、簡単に言うとそうですね。

金:ツールとして、望ましい姿ってありますか?
  ソフトバンクのプロジェクトでは受け付ける、接客といったコミュニケーションの部分をPepperは担ったわけですが、他にもロボットに対して「やらせてみよう」みたいなインタラクションのイメージとか、役割はありますか?

谷:ああーなるほど。そうですね…。
  いかようにも作り次第とは思うんですけど、一つは「メディア」みたいなもんですね。
  ロボットを使って、表現したいことをやる、みたいな。

金:興味深い答えですね。

谷:ロボットでしか出来ないことって割とありそうに思うんです。

金:ああ、何となくPepperとロボットアームでなさったことがわかって来たように思います。

谷:僕自身の企画ではないんですけど、上手くハマったとは思ってます。

金:あの組合せで面白いなと思うのは、「場における役割」が割り振られていたことだと思いました。
  確かにPepperは腕は付いているけど、ロボットアームみたいなことは出来ないし。

谷:割りきって考えてもいいと思うんですよね。「あいつ何にもできない」みたいな(笑)

金:話を「見出し」に戻しますが、Pepperも接する人の何となく持っている欲求で見出し方とか、求める振る舞いが変わるように思うんですよね。
  自分の中に持っている偏見というか、バイヤスみたいなものが「見出し」に露見しているように思います。

谷:Pepperといつも共に過ごしたい、連れて歩くみたいなことをやっている人がいます。
  その方は、「好き」とか、「連れて歩くことによる表現」をやっていると思っています。
  僕自身は、そういうのとか、癒やしみたいなものはあまりないんですね。
  僕にとっては、Pepperのプログラムを組むことのほうが面白い。
  Pepperって自分でプログラム組むのが一番面白いんですよ。
  入っているアプリで、「こうやって、こう動く」みたいな。

金:ああ、それで思い出すのはロボットに対する経験値」みたいな話ですね。
  飲み会で(笑)Pepperのハッカソンなどを観ている方にお話をお伺いしたする機会があったんです。
  印象に残ったのは、Pepperと過ごしたことがある人とそうじゃない人とは3周くらい先をいっている、みたいな話がありまし。
  で、谷口さんは3周回ってる人のように思うんですけど(笑)

谷:ああー(笑)

金:でも、私は過ごしてないし、プログラムをしていないので、わかっていないと思うんですよね。
  何が「3周」なのかなっていう。

谷:ああ、なるほど。
  その話を聞いて、多分なんですけど、1周って、お店とかで接してみる、みたいなとこかなと。
  で、2周って会社とかから言われて何かつくってみた、みたいな。で、ここで割とみんな普段の仕事に戻っちゃうわけです。
  そこから、「Pepper使って何ができるんだろうって考え始めている人が3周めじゃないかなと思うところはあります。
  Pepperの限界とかも理解しつつ、そこから始まる可能性を語れる、というようなところなんじゃないでしょうか。

金:なるほど。3周めってそういう表現だったわけですね。

谷:多分ですけど。
  使ってみて、ダメな奴なんですけど(笑)

金:(笑)

谷:ダメなんだけど、どこから考える、始める、という。

金:ううーん、なるほどですね!

■くまってさー(笑)3周先を走れ

何とメイン料理を撮り忘れるという失態…
すごく美味しかったです(笑)
金:話をくまに戻してみたいのですが、実は最近、くまのぬいぐるみ型のIoT機器が立て続けに出てます(笑)
  で、自分のほうが先後わからないですけど、ハッカソンの場で作って議論した、という経験値から言うと、自分が目指すのはくまじゃないなと思いました。
  見て、くまは確かにかわいくて、出てきた製品もなるほどと思うんです。
  でも、やりたいことをくまで表現してみて、体験した人の反応があって、初めて「あ、これは何だろう?」という感じになったんですね。
  くまきゅに求めたというか、欲求みたいのって何だったのかな?と。
  谷口さんのように、創ってる側の人、特に「関係性」みたいなことを考えられる人に聞いてみたいというのがあります。
  くまきゅみたいなものってどう映ったんでしょうか?

谷:ああ~…。
  今日は実物ないんですね(笑)

金:雨で持ってこれなかったんですよね(笑)

谷:体験がないので、不確かな部分はありますが…どっきりとかしかけたいですね。

金:どっきり!

谷:周りもびりびり~ってなるとか(笑)

金:あははは!(笑)
  ああ、思い出しましたが、その開発後の議論で「人間側が受動的」であることを話してました。
  人間側の思い通りの反応って「操作って言う行為と何が違うんだろう?」と思ったんです。
  どっきりほど過激でいいのかわからないですが(笑)人間が意図しない反応っていうのはいいですね。
  で、人間側が受動的なインタラクションなんですけど、動作のためのトリガーはあってもいいのかなと思うので、設けましょうと。
  でも、センサーがこれだけ発達してきて、人間側もセンサーで振る舞いをとられることにどんどん慣れていくと思うので、意識したトリガーでなくてもいいかなと思います。
  そこで、モノ側が意思をもっているような動作ができたら、ソレは面白いなと思うんです。
  先ほど仰ったどっきりというか、サプライズもソレに近いものを感じました。
  同列で捉えていいのかわかりませんが、ペットなども「自分の思い通りにならなさ」がかわいい側面もあると思うんです。
  それも表現したいことの一つです。

谷:そういうのもいいですね。
  世の中、思い通りにならない事のほうが多いですよねえ。
  僕は楽器をやったりするんですけども、インタラクティブに楽器のように扱える機器もあるじゃないですか。
  実は僕は簡単に扱えるような類の楽器的なものはあまり好きではないんです。
  ああいうのって子供とかに人気だったりするんですけど、予定調和内といいますか…。
  いくつかあるんですけど、僕としては、なんて言うんですかね、深みみたいなものを感じられないというか。
  例えば、ブラジルの楽器があるんですけど…

金:あ、ここでブラジルなわけですね(笑)

谷:ええ、あはは(笑)
  パンデイロという、タンバリンみたいな楽器があります。

谷:単純でシンプルなんですけど、やりこんでいくと、いろんな工夫ができたり、演奏者が考える余白があるというか。
  シンプルでアナログなんだけど、難しくて奥が深いというモノ・コトを面白いと感じます。
  で、思い通りにならなさって、まあ一種…思い通りにならない→思い通りになるという経路のほうが楽しいのかなと。

金:!!

谷:割とみんな簡単に思い通りになるものを求めるんですけど。
  まあ、僕の好きって感じじゃないですね。

金:おもちゃとかでも、すぐ飽きるみたいな側面もありますしね。

谷:僕の乗ってる自転車は競輪用のなんですけど。

金:またマニアックですね(笑)
谷口さんの自転車。赤がかっこいい。

谷:変速機とかもなくて、乗ったら大変ではあるんですけど、慣れると面白いというか。
  都内の坂なら登れちゃいますし。
  まあ、僕はそういうのが好きなんですね。
  ある種、Pepperを扱うのも似たところがあります。
  思い通りにならないけど、なったら面白い。
  で、創り方とすれば、半分創って、後はユーザがつくり込んで行くみたいな。
  プログラムにしても、CGのプログラムを創ってデザイナーに渡すと、僕自身が想像しないようなとんでもないパラメータを入れて絵を創って返してくる。
  そういうのが楽しいんですよね。ああ、面白いなと。
  ある意味、半完成品みたいな世界が個人的には面白いと思っています。

金:使う人との「セッション」みたいなことですね。

谷:そうなんです。
  でも、最初のウケは良くない。
  最初の5分で「なんだこれ」みたいな。
  使いやすい、わかりやすいモノのほうがウケるんですけど、でもまあ、そういうのが好きな人がやればいいなと。
  僕個人はそういうのは好きではないし、自分ではやらないです。
  僕からしたら、くまきゅも、今井さんや金子さんの想像しない遊びが生まれたら、それが成功なんじゃないかと思います。
  そうなったら、「良い」プロダクトなんじゃないかと思います。

金:それは、すごい、すごいですね…(興奮)

■インタビューを終えて

やっぱり谷口さんは面白いし、すごいなという感じです。
何がすごいって、専門性の高い人って高いだけに目の前の自分の分野にフォーカスを絞りがちなんですけど、谷口さんは俯瞰する視点をお持ちで、伴って分析力が高い。
そして、大抵、自分分析ができないひとが多いわけですが、それが恐ろしく冷静になさっている。
そして、創り手側として、先端の考えの方との接触機会を頂戴できて、とても光栄です。

メイカーズインタビュー#2 谷口直嗣 さん 前編

■駅にて

金子(以下金):こんにちは~

谷口(以下谷):こんにちは。今日はどこでインタビューしましょうね?(お昼をご一緒する約束をしていた)

金:じゃ、ちょっと人がやや少なめの場所に行きましょう~。

 到着

谷:何にしますかね?


金:前はエスニック料理ぽいのがおいしかったように思いますが…。

谷:ブラジル料理どうですか?

金:あ、いいですね。

谷:僕はブラジルが好きなんですよー。

金:へえ~、それはどうしてですか?

谷:僕、音楽やるんですけど、ブラジルは音楽が素敵なんですよ。

金:あ、そうですね。谷口さんが関わった作品だと、Music2Gameが好きです。



■ブラジル料理のお店に到着!

谷:ブラジルはフェイジョアーダっていう代表的な家庭料理があって、ソレが美味しいですよ。

金:あ、お詳しいですね。豆のお料理でしたっけ?

谷:そうですそうです。

 お料理を取ってくる

谷:今日のインタビューは今井さんと作ったくまきゅの話なんでしたっけ?

金:そうなんですよ。
  くまきゅは作ってみたものの、次って考えるんだっけ?考えるとしたら、見た人の反応欲しいよねという話になりまして。
  IoTとかロボットとかHMIとかって言葉を知らない方にお伺いしても面白いとは思うんですが、まず、私自身が、クエリエイターというか、創る側の人を中心に今はお伺いしています。
  「この人と話したら面白い!」って人にインタビューをお願いしていますね。完全に自主プロです。
  クリエイターと言っても色々な方がいるのですが、谷口さんは、Pepperのプログラミングなどのお仕事をされてますよね。
  最近ではソフトバンクショップの窓口受付をPeopperとロボットアームがやるというプロジェクトをされてました。


谷:ああ、そうなんですよ。

金:某飲み会で、スターウォーズのC3POとR2D2の違いのお話を聞いて、「面白い!」と思ってお願いしたわけですけど…。
  ロボットはお好きなんですか?

谷:うーん、今後、(ロボット関連は)活性化する業界だと思ってますね。

金:話はそれますが、谷口さんってTMCN とかで谷口さんの話が出るときは、「1周早い」みたいな言葉で語られる感じなんですよね。
  面白いとか、関心を持つ対象の話題で「嗅覚」という言葉を使われたことがあって、その言葉の選び方は興味深いなと思ったんです。
  今のお話にも「活性化すると思っている業界」みたいな感覚が谷口さんにはあるわけですけど、お話の途中で、関連が出てきたらその辺りの話も聞きたいなと思ってました。
  因みに「ロボット業界は活性化する」と思っているのはどうしてですか?

谷:あー、まあ、最初にロボットが来そうだなと思ったのは、2~3年前にGoogleがロボット系の企業を買収したりしているのを見ていて…

金:四足歩行のですか?

谷:そうです。他にも買ったりしています。
  スマホってもう色々育ってきている市場なんですけど、次のプラットフォームはロボットと考えているんじゃないかと思ったんです。
  そしたら、ソフトバンクがPepperをやると。
  で、アルデバランという会社のサイトを見たら、ソフトバンクが出資をしていました。
  ソフトバンクもそういうことを考えているのではと思ったんです。
  その内、アルデバランがソフトバンクのグループ会社になって…と、ロボットが来るなというのがありました。
  後、人間側からロボットを見た時に、ロボットに仕事を奪われるみたいな話もあるわけですけど、だったら、ロボットを使う側になれば、自分の仕事はあるよねと(笑)

金:(すっげー…)

谷:で、僕は3Dのプログラミングをするんですけど、Pepperのプログラミングって3Dと似てると思うところが多いんです。
  アニメーションつけるのにタイムラインを使うとか、ポーズの付け方も、3Dのプログラミングと同じ要素があります。
  だから、ロボットとCGは同じだなと思って、ロボットとCGの融合みたいなものを考えて、デジハリでコース作りましょう、みたいなことを一緒に考えたりしています。

金:大学とかの工学部もロボットのコースは人気のようですね。

谷:後、僕は基本的にあまりメジャーなところは狙わないんですよね(笑)

金:ええっ(笑)

谷:僕にとっては「極める」ってあまりできないというか…途中で飽きちゃうんですよね。
  でも、80%くらいできる、みたいなところって「極める」よりはできると思うところもあって。

金:とても…私とかから見ると「極めて」ないとは思いませんけど…。

谷:僕はそういうのよりも、色んな分野とか領域をまたいで仕事したほうが面白いと思ってます。
  なので、ロボットとかそういうのも面白いなと思って関心を持ちました。
  フリーランスなので、自分の仕事は創って行かないと駄目ですし、自分の得意なことをやろうかと。

これがブラジル料理…ウマー!
金:なるほど。


美味しいブラジル料理を食べつつ、話は続く…!