■アスラテックの名物エンジニア、吉崎さんの野望
アスラテックの名物エンジニア、吉崎さんにお話を聞いてみることにした、くまきゅ開発チーム。お話を聞くほどに、吉崎さんの恐るべき野望があらわに…(冗談ですご対面 |
■V-sidoが創る世界
金:話を少し戻しますと、そういう「世界を創る」という考えから、V-sidoを創られたと。吉:そうですね。
僕は、だから、1台のロボットを創ることには執着していなくて。
自分が10年かけて1台のロボットを創るよりも、ロボットが世の中にあふれさせる方法がほしいと思ったんです。
金:おおぅ…(や、野望見えてきた!)
吉:となったら、ソフトウェアだと。どうすれば、人型ロボットが”社会的立場”を得られるか、そういう検討を始めたいなと思ったんです。
そのために、自分で10年以上かけて職人的に一台のロボットを作るのも意味があるとは思うんですが…それでホントになんでもできるのかなと。
私は工事現場で働くロボットも、ステージで踊るロボットも、家庭で働くロボットも、どれも流行ってほしいけど、まだ未熟な点があって、だから実際に社会にロボットを置いてみて、役に立つのか、私自身の眼で観てみたいと思いました。
その流れの中で、私のソフトが助けになって出てきたら素晴らしいなと。
頭の中のシミュレーションだけでなく、私自身が現場でやってみたい。
意外な使いみちがあるかもしれないですよね。僕だけではできる数もたかだかしれているので、誰かとやってみたい。
で、その土壌をつくるにはソフトだと思ったわけです。
できるだけ汎用性が高くて、ロボットの試作に便利なソフトを作って「特殊なロボをやりたい方はぜひ声をかけて下さい」と言いたかったんです。
金:ほ~…すごい…なんだろ、理解はできるんです…が、大きすぎて…。
とんでもないウイルス的な自己増殖機能を持ったものがでてきたというか、生産環境が出てきたな、みたいな感覚もありますね(笑)
まあ、でも、わかり、ます(笑)
わかってるのかな?とんでもないものが生まれる現場に立ち会ってる気が…(笑)
吉:いまは、クラタスなんかの巨大ロボットや、…車に変形するロボの製作にも参加させてもらっています。
他にもアイドル型のロボットや人間に装着するロボット、重機を操縦するロボなどなど、まだ表に出ていない他のいろんなロボットもありますが、ソフトを中心に協力させていただきながら、普通では得られない種類の経験値をためていけると思っています。そこから、次のロボットに関することも具体的に考えられると思います。うちの会社、アスラテックは、名前が出ないこともありますが、関わっているロボットの特殊さと幅広さはなかなかのものだと思いますよ(笑)
うち自体は駆け出しの企業ですが、ロボットを作ったり運用するのは各分野の一流の方たちです。そのかかわりの中から、これからロボットが出てくる社会を作る糸口を見つけます。
金:すごくわくわくしますね(笑)
吉:それができたらパトレイバーできるかなって。
自分でつくるのもありですけど、そこじゃないなと思うので(真顔)
金:大丈夫ですか?こんな重要なお話を…自主プロダクトの(しかもくま…くま!)ブログに載せてしまっても?
吉:全部、いかにパトレイバーが好きかという説明だと思って下さい。
あの作品が好きな人って、ロボット好きな人もいるとは思いますが、世界観が好きな人が多いと思うんです。
ロボットに所属があったり、戦うだけじゃなくて、社会性を反映させているとか…。
それって世界観だと思うんです。
じゃあ、僕もパトレイバー好きとしては、ロボットそのものだけじゃなくて、「世界観」を実現しようみたいな。
それだけの話です(笑)
金:あはははは(笑)
すごいなと思う反面、とんでもない力を持った人がパトレイバーにはまったなみたいな(笑)
吉:まだまだなんですよ(真顔)
金:今井さんが、吉崎さんのことを、突き抜けているという(良い)意味で「変態だ」って仰ってたんですけども。
吉:形状変化って意味・・・じゃなさそうですね。
金:トランスフォーマー的な(笑)
■「世界観がある」ということ
金:私の仕事は、価値創出のためのデザインリサーチをしてくれ、というご依頼があるんです。その過程でこういった話が聞けるのって貴重ですね。
吉:僕も新規事業の話は好きですね。
金:リサーチをして、アイデアワークショップで考えて…と進めるんですが、なかなか「世界観を創る」話までもっていけないこともあります。新しいものを創る上では、すごく大事なことのように私は思っているんですけど。
吉:ああ、ちょっと偉そうに聞こえますもんね(笑)
金:いやいや、本当に大切なのかもしれないと思うんです。
個人レベルでもいいので、どうポジティブな行動変容が起きるのかを考えないとダメかもと思うんです。
吉:そうですね、そういうことを描くお仕事ですもんね。
金:そうです。
でも、吉崎さんの場合は変容の影響範囲というか、レベルが大きいですね。
吉:うーん、朝起きたらベッドのそばにロボットが立っていてほしいとか、そういう具体的なイメージをお伝えする方法もあると思うんですが、そういうのは実は気をつけているんです。
それを言べきなのはメーカーさんだし、そういったその業界とか分野のプロフェッショナルの方と一緒にやっていくためにも、様々な分野にロボットが要る必然性、可能性を見つけたいというのが強いんです。
人間がやっていることをロボットが奪えるか、みたいな(笑)
それは冗談ですけど。ある意味挑戦ではあると思います。
金:ビジョンでもあり、野望でもありますね(笑)
吉:「奪う」って言葉は誤解を生みそうですけど。
単に別の仕事が出てくるだけだと思いますし、メンテとか保守とか・・・。
いくつかの社会的立場(仕事を実施するという意味での)をロボットで置き換えられるかというだけの挑戦です。
次は是非ユーザテストで(笑)
金:あははは、是非(ひえ~野望の片棒を…!
似たような話でも、自動改札機の話がありました。
駅員さんの切符を切る仕事を奪うねと。
で、結果はご存知のとおりなわけですが。
人工知能も「仕事を奪う」という意味では同じような議論があったりするわけですけど。
逆に言うと、「そんな奪われるような仕事をしていて良いのかな?」みたいな個人的な疑問はあります。
切符を切って楽しい人もいるとは思いますが、やるべきところ、やらなくてもいいところはあるなと。
向いている、得意なことやればいいじゃん、みたいな。
切符切る人の楽しみが毎日来る人との挨拶だとしたら、そっちに寄せればいいんじゃないかと思います。
吉:逆転はあるかもしれないですね。
券売機は必要なのか?コミュニケーション大事なら手で支払えばいいじゃないか、とか。
食堂でも、お客様とのふれあいを大事にしたいからお代は手で頂きます、的な。
僕はどっちでもいいと思います。
靴の話と同じです。すごく、小さな違いだと思う。
「券売機があるのは知っているが、でもウチのチェーン店では使わない」みたいな。
金:うーん、なるほどですね。
それで言うと、「世界観」が実は決まっていないから、どっちでもいいみたいな議論が沸き起こるのかもしれないですね。
場の目的、ルールとか、宣言みたいなものがあって、そこでどちらを選ぶかがあるとか。
そういう話なのかもしれないですね。
吉:牛丼屋のコンセプトの違いとか、調べると面白いですもんね。
来場者の種類とか、券売機を使うか使わないかとか、コンセプトで違ってたりしますもんね。
もちろん、系列店を持っているかどうかとかでも違うんですけど、世界観、コンセプトを持っていればはっきり決まりますね。
金:なるほど。
■くまきゅの世界観
金:世界観の話がでたんですけど、くまきゅも実はそういうところから創るというのに挑戦したくて、V-Sidoまで大きな話ではないですけど、場の宣言とか、どういう世界をつくるんだというのを考えてからモノの開発に入りたいんですね。だから、今、こういう取り組みをしているんですけど。
吉:さらにユーザに近くて、役に立つものになっていくんですね。
ぜひ教えて下さい。
金:ああ、まだ決まってなくて(笑)
決まってはいないんですが、何となく、作ってみた時の反応から考えてはいます。
「かわいい」「抱きしめたい」みたいな反応の向こう側の、ユーザ欲求に焦点を当てたいなというのはあります。
反応は、その欲求を引き出すトリガーになったのかなと思っていて。
「かわいい」って何だろうな、という。
他のクリエイターさんとかに話を聴いてみると、スター・ウォーズのC3POとR2D2を例に教えてくださったんですが、それって人型で言語を扱うのが良いのか、みたいな。
吉:ああ、人型で言語を話さないほうがいいということですかね?
金:そうです。「かわいい」と感じる、はその差分への感覚に通じるところがあると思ってます。
「かわいい」と思えたり、感情を引き出す世界観を創りたいという気持ちはあります。
吉:僕もR2D2のほうが好きですね。
金:以前、東大駒場リサーチセンターのオープンハウスで高橋智隆さんのご講演を伺う機会があったんです。
あの方はお一人で創ることを好むようですが…全部一人で創りたい!みたいな。
吉崎さんとはちょっとまた違う方向性だとは思うんですけども。
でも、一人で作ることによる、経験のお話を伺うことが出来たなと思いました。
振る舞いとか、インタフェースとか、それも含めた世界観の作り方がお上手で。
サイスが小さい理由とかも、ロボットができることの限界を考えた上でのことなんですね。
お話はすごく参考、というか、勉強になりました。
吉:そうですか。モーションも、振付とかも自身で作られるそうですね。私はそういう能力もないですし、考え方としても、自分で振り付けをするというより、ダンスの振付師の方なんかの意向を反映できる素地を作る方向です。
カメラを作る人と、芸術品を描く人の違い・・というと表現が正しいかどうか不安ですが、高橋さんのすごさは、簡単に誰かが真似できるものじゃないと思うので。
金:それぞれ違う意味で突き抜けてるというのは同じだと思いますけどね(笑)
でも、あからさまに違うというのは仰った喩えのとおりですね。
■ロボットの振る舞いに対する見出し
金:くまきゅの見出しみたいのってAIBOとか、ああいうモノへの愛着を引き出せたら面白いのかなとか、考えたりしてしまうんですが…。吉:うーん、僕が展示会でくまきゅに触るとしたら、「かわいいから」触るとか、愛着があるから触るというのではないかもしれません。
むしろ、「これ、作った人は面白い人だ!コミュニケーションとりたい!」っていうので触ると思います。
金:ああ、なるほど。
吉:相手に一方的な人格だけあっても、簡単には愛着わかないかもしれません。すごした時間とか、条件をそろえたいというか。。。これは、ひねくれてるだけですね。一方で、ただの工具でも、条件が整って気に入れば1日1回あたまなでたくなるかと(笑)
このくまとコミュニケーションとりたい!っていう願望は、もっと外堀から条件を整えないといけないかもしれない。
金:ああ、何かの拍子に「コミュニケーションロボット」って言われた時に「まだコミュニケーションロボット…ではないかも…」と思ったんですよね。
吉:ぬいぐるみって、自分の投影だと思っているんです。だから本物の人格があるとむしろ邪魔で、ユーザの予想を裏切ってはいけない。
相手が本当の他者ではないほうが、投影しやすくて、求める姿のように思います。ぬいぐるみなら。
金:近い話はありました。
これまでのインタビューでも、「半完成」でいいのでは、という話が出たんです。
不完全な形にすることで、ユーザーが好きに「投影」「創る」方になっていくと。
ユーザーが作り上げられる余白みたいなものがあったほうが良いんだろうと。
吉:同人誌でよくある話ですね。
金:えっ同人誌ですか?
吉:「原作絵が下手な方が二次創作が捗る」
金:えええー(笑)
吉:いや、割とまじめに言っています(真顔)
それとも、芸術品で、ミロのビーナスとか、サモトラケのニケのほうが綺麗なたとえですかね(笑)
金:ああ、想像を掻き立てられる何か、的な。
吉:そうですそうです。
金:ああ、そういう「欠け」に自分の何かを反映させてるわけですもんね。
そういう振る舞い、世界を創れたら面白いなと思ってますね。
吉:コミュニケーションロボットって、依り代という役割があると思います。
依り代とするのであれば、2通りあると思います。
1つは、遠くの人を乗り移らせて、他者の依り代になる時。テレプレゼンスみたいな。
もう1つは、自分との対話で、自分の依り代にする時。この場合、いかにユーザの妄想を邪魔しないかも重要かもしれないですね。
金:うーん、電話の話が出ると、KDDIと、docomoのくまのぬいぐるみを思い出しますね。
私達のチームもくまで作ってみていたので、ライバル現る!みたいにお知らせ下さる方もいらっしゃったんです。
でも、私個人は「お、くま(の形をしている製品)だなあ」としか思わなくて。私自身、くまが創りたいわけでもないですし。
そして、電話…ちがうなあと。
吉:他にもくまのインタフェースって結構ありますよね。
金:はい。東工大の長谷川先生とか、VR研究でも見たことがあります。
吉:ぬいぐるみというと、テディベアのイメージありますしね。
金:じゃあ、くまじゃないのなら何なんだ、って話なんですけども、ちょっと変な意味じゃない性欲みたいな、ふれあい欲みたいなものかなと思ったこともあります。
観て下さる皆様を観てると、お子さんとか、成人男性も反応高いんです。
で、「ぎゅ(ハグしてくれる)」というのがいいと。
色んな見方をしてみているんですけど。
吉:うーん、その見方も面白いですね。
金:子供とか、男性でも素直な方が反応したのかな、と思ったところはありました。
吉:子供も来ますか?
金:来ましたね。きゃーって言って(笑)
吉:ああー、どういう場で見せたんですかね?
金:ああ、ハッカソンと展示会ですね(笑)
一般的なサンプルと言えるか…(笑)
吉:そうかもしれないですね(笑)
体験しないと損!って考え方かも(笑)
あるいは、くまきゅを作った人と話したい!みたいな邪念かも。私みたいに(笑)
金:そうですねえ~。
まあ、でも色んな見方をしているうちにポジションを模索できるかなと思ってはいます。
■くまは何に化けるのか
吉:で、くまがつくりたいわけではないとすると、何になるんでしょうね。単にハプティック研究がスタートだとすると、意外にも2号機以降はペン型とかになってたりするんですかね(笑)
金:お、それは…目をそらしてみます(笑)
吉:まずはクマがやりやすいだけだったりとか(笑)
金:うぐ(笑)
吉:たしか、CGの入力インタフェースでくまのぬいぐるみを用いたものがありましたが、製品化に際しては、人型になってました。
関節可動域の問題もありますから、当然と言えば当然ですが。
例えば抱きしめるとかという要素を抜き出して意味を与えると、くまのぬいぐるみじゃなくなることはあるかもしれないですね。
金:そう思います。
吉:そうなった時に、何の欲求を体現させたいかで方向性が違ってくると思いますが…。
違う製品との連携は今のところないんですよね?
金:現時点では考えていないですね…。
吉:道具とかじゃないですし…人間の欲求ってことですよね。
ぬいぐるみが満たしているとすると、もしかしたらドールとかに近いのかもしれないですね。40cm-60cmの人形。
ただもし、ドールをロボット化するなら、モータ入れてガシガシ歩くとか、お仕事するのはやめたほうが良いかもしれません。
金:ああ、それは何となくそう思います。
吉:お好きな方に話を聞くと、動いてほしいわけでも、仕事してほしいわけでもないんですよね。
自分の妄想の範囲を超えてほしくない。
動いてほしくないなら、ロボット化は必要ないかもと思ってしまうんですけど、そうでもない。
着替えさせるときに、手をかけるとバンザイしてくれるとか、足の10個以上ある関節を1個1個動かすんじゃなくて、腰だけ手を添えると、綺麗に立ち上がってくれるとか、そういうのでも良いのかもしれないです。
手を引くと、歩いてくれるとか。無理して「勝手に動く」「AIでコミュニケーションする」とかしなくても、ユーザの思う動きを補助するだけでいい。それが、ぬいぐるみならどういう感じになりますかね。
金:インタフェースのインタラクション実験で、オウム返し実験があったんです。
「自分を投影する」って色んな捉え方できるんですけど、内省を促す場合には、その程度の反応でも良いのかもしれません。
ドール…は私個人はやや馴染みがないので、人間の形をとるのかはちょっとわかりませんが。
でも、興味深い世界だとは思いますね。
私自身は、人形とか、ぬいぐるみとかよりは、本物の人や動物のほうがかわいらしいと思うのも影響しているかもしれないです。
吉:それは、たしかにそうですね。
金:ああ、人によるとは思いますが(笑)
吉:人、動物でも見本に似せようとしている限りは越えづらいんじゃないかなと思います。
でも、それにしか出来ない何かが、すぐに出てくると思いますが。
本物のほうが良いって、極めて正常ですよね。
僕は割と人型が好きですけど(笑)
あと私、くまは本物じゃないほうが良いな(笑)
金:たしかにそうですね!(笑)
■動物のくまとぬいぐるみのくま
吉:本物のくまを模倣すると、どちらかというと木彫の方になりますよね(笑)ぬいぐるみはもっと、イチゴに対するイチゴ味というか、記号化されている気がします。
金:そうですね。
ぬいぐるみはかわいさ重視なのかな、関節とかも人に近くて、頭だけ記号化したくまですね。
吉:そうですね。案外、頭をねこにしても機能は変わらないかも(笑)
金:ああ、ねこきゅでもいいんですけどね(笑)
吉:にくきゅ!みたいな(笑)
金:ああ、吉崎さんからまさかのねこジョークが(笑)
でも、くまはいいとしても、人形に馴染みがないのって、人の形をしているのに人でないところに逆に怖さを覚えるのかもしれないです。
ピエロとか、表情がわからない人形は更に怖い気がしてしまう時がありますね。
吉:能面とか、ああいうのもダメですか?
金:あー、それはまたちょっと違う気がしますね。
能面の感情の反映させ方ってもう少しストレートな気がしてます。
感情の反映を邪魔しないように限りなくそぎ落としている感はあるんですけど、ギリギリ怖くないですね。
意図がわかりやすいのかもしれない。
吉:もしかしたら、コンセプトは石黒先生のテレノイドに近いですかね。
石黒先生のテレノイドはどう思われましたか?
金:うーん、まだ経験していないので、何とも…。
」
吉:たしか、人間ぽいけど、ギリギリまで個性をそぎ落としてこの形状になったとうかがったような。
金:映像でしか見ていないですが、パット見怖いなと思いましたね。
体験はしていないので、何とも。
吉:ちょっと怖いと…(にやにや
金:いやいや何でなんですか(笑)
能面もパット見は怖くなってますよ?
ピエロとか、何かを隠している感じがあるとだめなのかな?
うーん、なかなか難しいですね。自分の感情分析は。
■くまきゅの向かう先
良い顔!くまきゅも喜んでいる! |
金:いやいや全然。吉崎さんの現在に至った経緯とか、野望の話だけでも面白いです。
お考えになられたことをエピソードを伴ってお伺いできるのも興味深いですし。
吉:くまきゅに直接的ではなくて申し訳ないですが(笑)
金:答えを教えていただきたいわけではないので(笑)
くまきゅの話で言うと、スペキュラティブデザインでも良いかなとは思います。
問題提起型デザイン、ということなんですけど。
生活の中にくまきゅが存在するという姿を見せた時に、人の反応を引き出すというか。
吉:ふむふむ…ちなみに、アートとは違います?
金:バイオアートみたいなのにも近いかもしれないです。
先日、バイオアートの講演を聞いたんです。
既存の考え方に対する疑問符を投げかけることになるので、ちょっと倫理とかそういうものに触れるような側面もあるように思いました。
そこまでは行かないかもしれないですけど、従来の在り方をちょっと見直すという感じですかね。
チームではそういう議論もしています。
吉:むーん。
金:例えば、かわいいの掘り下げもあると思います。
コレを採用するかは別ですが、立場の優劣によるかわいさ、みたいのもあるなと思っています。
自分の言うことを聞く、自分の思い通りになる、だからかわいい、みたいな。
で、ちょっとだけ行き過ぎている感じにしたいっていうんですかね(笑)
吉:ああ、なるほど。
そこにちょっと驚きがあると益々いいんでしょうね。
聞き手がほしいといっても、飽きてしまうので、時々おっと思わせる切り返しをする。
コミュニケーションロボットの難しい点ですね。
金:なるほど。
吉:想像の範囲ちょっと越える、っていうのが良いのかもしれない。
難しいですけど。
R2D2は実際の人間が中で振舞っているので、頭いいんです。
しゃべれないから頭が悪いとかじゃなく、ちゃんと考えてますからね。
金:なるほどですね。
くまきゅは、子供の寂しい気持ちを受け止めるとしたら、その頻度を何らかの形で「こうですよ」と返したらどうなのかなと思ってはいるんですけど。受け止めるだけじゃなくて、返してくる。
吉:数字ですか?
金:数字でなくてもいいんですけど。
表情とかでも良いです。
それを問題提起型と言ってもいいかもです。
吉:どうも、研究用の実験っぽさが出てきますねぇ。
金:あはは研究ですね(笑)
吉:なんだかなー、みたいな(笑)
研究者でなく、参加者が気づく形がいいかもしれないですね。
技術的な実現性はおいておいて、振る舞いに応じて形状変化とか起こると面白いですね。
「ああ、自分はこういうふうになってほしいと思ってしまっていたんだ」みたいな。
ある意味衝撃かも(笑)
金:ああ、それは面白い。
吉崎さん的ですね。その考え方は。
吉:考えさせられる気がします。
自分はこういうふうにしか見ていなかったのか、とか。
実はこういう欲求を持ってたんだな、という。
友達っていうかたちだったり、猫ってかたちだったり。
金:それはすごく興味深いですね。
振る舞いを本人に返す、というのは考えていきたいですね。
加速度を入れて、持ち上げられ頻度を測ると。
で、「そろそろだな」と思うと、逆に抱きしめに来てくれる、みたいな。
吉:適切なタイミングで抱きしめてくれとせがんでも良いかもしれないですね。
金:ペットとか、そうですもんね。
吉:鬱陶しいこともあるので、そのバランスの最適化はどうするのか、とかはありますが。
金:人工知能とかも考えてしまいますけど。
吉:あと、どういう状態にあるのかを測るとどういうことをされているのかわかりますね。
人によって違いあると思うので。
投げつけてることとか、子供だと振り回したりすることもあるかも。
「何するんですか」とか言い出したりすると面白いかも(笑)
■インタビューを終えて
吉崎さんの野望を聞くと、驚くんですけど、未来を感じて元気をもらえます。ビジョンが大きく、世界観への強い思いが印象的でした。
そして、幅広くロボットにかかわられているだけあって、お話も幅が広くて楽しい時間を過ごせました。
書き起こしが面白くて、手が止まる止まる(笑)
そして、パトレイバーを見返したくなる(笑)
さて、書店に行こうかな…。あれ、これってパトレイバーファンの対談だっけ…?